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それは……恐らく告白の返事が良い結果ではない事よりも残酷な事だと俺は思う。
そして俺は再び謝りながら詩帆さんに頭を下げ、手のひらに乗せられた髪紐を思いきり握った。
「優くんが謝る必要なんてないのに……これだから優くんはお人好しって言われちゃうんだよ」
「……ごめん。でも、詩帆さんの気持ちから絶対に逃げたくないから」
俺は詩帆さんの告白を断ってようやくさっき胸の奥で焦がれていた正体が分かったかもしれない。
まだ少しだけ残るこの胸のモヤモヤは……どうやら俺には他に気になっている人がいるんだと思う。
まだはっきりとは言えないけれど、詩帆さんではない他の女の子が……このモヤモヤを作り出していたんだと俺は素直に感じる。
そんな詩帆もどこか晴々とした風になり、いつもの笑顔を浮かべながら優也の背中をぐいぐいと押し出した。
「分かってるよ。それじゃあ私の用事はこれでおしまいだから、優くんは早く帰って明日の準備をしないと!」
「えっ?で、でもこの紐は……」
「それはもういいの!そろそろ優くんに返さないとって前々から思ってたから」
そう言われながらそのまま半ば強引に押され続け、校門のやや手前まで来たところで詩帆さんはスッと俺から離れる。
「それじゃあ私はここで。優くんも明日は絶対に……無事に帰ってきてね」
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