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そしてそう言って詩帆は少しだけ懐かしむような眼差しで桜を見上げた後……くるりと半回転して桜の木に背を向ける。
「真歩さん。私が言うのは難かもしれないけど……明日優くんが成功出来るように天国から見守っててあげてください」
詩帆は目を閉じながら数秒風に揺られ、再び目を開くとそこにはもう告白に失敗した女の子はいなかった。
「よしっ!それじゃあ……また明日から楽しい生活になれるように、靴占いだー!」
そう校庭に響く楽しげな声は清々しく、詩帆自身も空元気などではなかった。
今まで内に秘めていた気持ちはモヤモヤと同時に恐怖もあったが、不思議と今は優也に気持ちを伝えられたことが本当に嬉しく思えるのだった。
やっとスタートラインに辿り着けたんだとさえ思えてしまうほどに。
そして優也の方も家にたどり着いてからしばらく詩帆の事を考えていたが、また明日からいつもと変わらない生活に戻れる確信があった。
告白を断った瞬間は何を言ってるんだと自分に対して腹が立ったけど、きっと俺は後悔なんかしちゃいけないんだ。
詩帆さんの気持ちは本物で、俺の気持ちも本物……だったらそこに邪な気持ちを混ぜるわけにはいかない。
優也もこんな体験は初めてなだけにしばし心臓の鼓動が少しだけ昂っていたが、落ち着いた頃にようやく明日の事にベクトルが変わる。
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