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優也は自分をそう奮い立たせると、真っ直ぐな声で女性に話の内容を告げた。
「今日は……お2人の娘さんたち、和羽と関羽の将来について話しに来た次第です。どうか、俺の話を聞いてもらえませんか?」
まさかこんな普通の学生にそんな事を言われるとは思っていなかったのか、女性はしばし固まったまま俺の事を見ていた。
そしてようやく事態が飲み込めたかと思うと急に敵意の込められた視線が注がれ、言葉にもそれが現れる。
「まだ時間には余裕があるはずですが……まさかこんな子供を寄越して来るなんて。どこまでも卑怯な方々です」
しかし返された言葉に優也は首をかしげ、逆に今度は自分が固まってしまう番であった。
どこまでも卑怯な……方々?
ここにはどう見ても俺しかいないはずなのだが、どうしてこの人はまるで複数人を指しているかのような物言いなんだ。
それを不思議に思った俺はそれを聞こうとしたが、それよりも先に母親が口を開いた。
「どうしてあなた方は……そうやって家族で迎える最後の日ですら壊そうとする非情な人間でいられるんですか!」
その悲痛な怒りに優也は更に状況が飲み込めなくなり、慌てて母親に事情を説明しようと一歩前へ出る。
「家族で迎える最後の日なのは分かってます!ですけどそれを決めたのはあなた達両親のはずだ!」
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