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それを考えるだけで優也の歩くスピードは少しづつ速まり、2人との距離が10メートル程になったところでスーツ姿の男たちが優也の存在に気づく。
「おい……そこの坊主。悪いがランニングコースでここを通るんじゃない」
どうやら先程着替えたジャージ姿を見て俺はランニングしている通行人だと思われているらしい。
もちろんその警告に優也が従うはずもなく、逆にそのまま走るスピードを加速させる。
「お、おい。お前聞いてるの……か?」
その態度にイラついた男が実力行使で優也に近付き、掴みかかろうとしたが……その男の腕は虚しく空を切り優也は脱兎の如くスピードでその男をくぐり抜けた。
ただの高校生にしては平均をかなり上回る速さに男は一瞬呆気にとられたが、すぐさま事態を飲み込む。
「し、侵入者だ!」
侵入者という表現が正しいとは男も思ってはいなかっただろうが、それしか言葉に表現することしかできなかった。
何故なら……。
この男に課せられた役割はただターゲットである女の子2人を無事に主へと送り届けるだけの……簡単な任務であったのだから。
何も警戒すること等なく、むしろ護衛もこの半数以下でも十分に足りると……そう考えていた。
しかし目の前を走り抜けた少年はこれらの心配を全て打ち砕く存在になり得ていた。
まったくの予想外、イレギュラーな事態に男たちの動きはプロとは思えないほど焦り、それを眺めている事しか出来なかった。
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