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これではどちらが犯人か分からないが、とりあえず優也としても激痛は勘弁なので殴られる前にポツリと呟いた。
「やっぱり伊集院家の人となるとそういうもの自分たちで解決したいんですかね?」
その言葉に棒を振り上げていた男の動きはピタリと止まり、信じられないものを見るような視線で優也を見下ろしたあと……何故かそのまま笑いながら優也の首筋を掴んだ。
「くははっ!これでお前らの未来は永劫表には出られなくなったな……黙っておけば良かったものの」
まさか自分たちの素性が知られているとは思っていなかったが、男はつい先日の裏切りの話を思い出していた。
「この前こちらの重役が伊集院の顔に泥を塗ろうと失敗していたが……どうやらお前もその類いらしいな」
ただの子供にここまでの情報があったのは男にとって予想外ではあったが、それも全て洗いざらに話してもらえばいいと判断した。
しかし優也はここで男にある申し出をした。
「それでちょっと相談なんですけど、ここでなんとか俺たちの事を見逃してくれませんか?この事は……誰にも言わないんで」
それは相談とは言えないレベルの申し出で、男はあまりに意味がない相談に本気で優也の頭を疑った。
「お前にはどうやら普通の考えが出来ないらしいな……ここでその相談が通るのは俺たちに物言える権力のある人間だけだ」
「だからそう言ってるんです……それでもう1回相談なんですけど、ここで俺たちを見逃してくれれば誰にも言いませんよ?」
その自信ある態度に男はとうとう我慢出来ず、再び棒を振り上げたが……。
「いいんですか?言っておきますけど俺は……伊集院小春の婚約者ですよ?」
優也はこの最強の肩書きを与えてくれた小春に心から感謝しながら男にそう言い放つのであった。
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