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どう考えても優也が知る常識の中では女の子が男の子にキスをする理由なんてものは、少なからず好意を抱いてるとイコールで結ばれてしまう。
もしこれが千佳以外の人であったならば別の理由を考えてしまうのだが、千佳の性格からしてそういうおふざけはやらなそうだし、ましてや……俺は千佳の事が好きなんだ。
そんな気持ちに気付いたところでキスなんてされれば、それこそ変な期待をしてしまう。
もしかしたら……。
そんな想像が鈍感な優也でさえ脳裏を過ってしまうが、実際のところまだ断言できないのがかなりモヤモヤしてしまう一因であった。
はぁ……俺も稚咲みたく人の心が少しでも読めたらこんなに苦労しないんだろうけど、こればっかりはどうしようもないか。
そんな夢をみてしまう優也であったが、明日からどうやって千佳に接したらいいのかという問題も浮かび上がっていた。
今はこうして冷静になれているけど、いざ千佳の前に立った時そのまま普通に会話を交わせる自信がない。
千佳が卒業式に告白をすると宣言したからには俺もその意見は尊重したいため、今日の話題は出せない。
となれば自然と話題は伊集院グループの事になる訳だけど、まさかこんな終盤で心が乱されるとは思ってなかったな。
千佳の考えとは裏腹に優也の脳内は悩みでいっぱいになってしまったが、不思議とそれは嫌な悩みではなかった。
たしかにこのモヤモヤはどこか支障をきたしてしまう可能性があるかもしれないが、それでも早く千佳に会いたいという気持ちが募っていた。
千佳とまともに会話する自信はないが、それでも会うだけでこのモヤモヤは晴れてしまうんじゃないかと優也は思っており、それはきっと間違いではないだろう。
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