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その引き入れた人物に優也は少し驚いたが、人差し指を口元に当てながら静かにというサインを送られる。
それに黙って頷き、扉から少し離れたところでようやく向こうから会話が投げられる。
「やはり優也も耳にしたようですね……お母さんが学園長の席を辞退するという噂を」
「あ、あぁ……香奈も俺と同じでそれを聞いたからここに来たんだろ?」
どうやらまだ全てを知っている訳ではない香奈も今の状況はかなり不安らしく、こうして普段は使われていない部屋から学園長室へと回り込む途中であったらしい。
「そうです。私も今日の朝に寮の先輩から話を聞いて、最初は何かの間違えだと思っていましたが……この騒ぎからすると嫌でも信憑性が高まりますね」
香奈は信じたくはないけれども、昨日の伊集院さんの話がきっと頭から離れていないんだと思う。
それは俺も一緒であるが、恐らくこの話は……。
そう考えたところで香奈が次に開けた部屋の奥に、難しそうな表情で外を眺める沙恵さんの姿があった。
「あら……まさかここに入って来られるなんてって思ったけど、抜け道を知ってる香奈がいるのね」
「昔からさんざん散々ここでかくれんぼをさせられましたからね。まだまだ他にもたくさん知っているのでどこに隠れても無断ですよ」
「あはは。別に隠れてた訳じゃないんだけど……ちょっと今表に出るのは危険かなと思ってるだけよ」
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