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「えぇ……それで私が見てもらいたのは差出人なんだけど、伊集院十蔵って人から直接届いたものよ」
そして沙恵さんが口に出した人物は俺たちの予想していた人物で、伊集院さんの警告が現実のものになろうとしていた。
「やはりその男ですか……しかしどうしてこんなにもお母さんの不信任だけで署名が集まるんですか。普通ならあり得ません」
不信任……それはつまり沙恵さんが今の藤堂学園の長には相応しくないと思っている人がこんなにもいるという事だが……本当にこれは正確なものなのだろうか。
確かに沙恵さんは少し適当な部分もあり、どこか子供っぽいところもあるかもしれないが……それが不信任に繋がるかと言うと、絶対にありえないだろうな。
何故ならそれが沙恵さんの良いところでもあり、俺たちと同じ目線であるからこそ生徒たちの人気も集まっているのだから。
そんな人が急に不信任の署名が集まったから学園長の席を渡せと言われたら、混乱するに決まっている。
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、相手が普通じゃないだけにこの署名も何か別の力が働いてると考えるのが妥当でしょうね」
「まさか……」
香奈はそれにハッとしたようだが、俺にはいまいち理解が追い付かない。
「伊集院十蔵はこの学園のPTAの会長とも精通してる人……多分その地位を抜け道にして、あとは自分の会社の権力やら金銭を使ったのかもしれないわね」
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