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外を見つめてるだけなのに暇じゃないと言い放つところが鵜島さんらしいが、こちらに話しかけてくれたという事はまだ完全に俺たちを突き放すつもりはないらしい。
それがチャンスだとばかりに優也は何気なく景加の心を動かす話を持ちかけた。
「俺も暇でここに座ってる訳じゃないから大丈夫。それでもってこれは俺の独り言だと思って訊いてほしい話があるんだ」
「今から独り言するのに私がいたら邪魔でしょう?だったら私が席を……」
景加は少し苛立ちを覚えながら席を立とうとしたが、優也の一言でその動きがピタリと止まる。
「今日の放課後に伊集院十蔵さんの事を誠実の塔で話し合わなくちゃな……あの人だけは絶対に止めないといけないから」
白々しい口調に思わず景加はそれが何と答えてしまいそうになるが、優也はそれを気にすることなく続ける。
「だけどもしかすると少し人手が足りないかもしれないんだよな……どこかに俺たちの力になってくれる人がいてくれればいいんだけど」
優也はそれだけ言うと席を立ち上がり、最後は独り言などではなくしっかりと景加の方を向いた。
「もしも自分が裏切り者だとか思ってるならそれは大きな間違えだと思う。それに鵜島さんはお父さんや芽依ちゃんの為に身代わりになっているんだろうけど……」
すぅと息を呑むと、優也は今まで自分が教えてもらったことを景加に伝える。
「なんでも1人で背負い込み過ぎたら、いつかはその荷物……落とす事になるぞ」
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