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それはいつの日か自分と兄である優也が本当の兄妹になった日の雰囲気で、こうして脱力しているように見えるが心の底から気合いが入っているのが伝わってくる。
今日もどこかで自分の兄は誰かの為に頑張るんだと思うと少しだけ胸が痛むが、それは別に嫌いな感情ではない。
稚咲にとって優也は自分の兄で、それ以上でもそれ以下でもないかけがえのない家族である。
「私の自慢の兄なんだから……頑張んなさいよ」
稚咲はその言葉にその想いを詰め、一言だけであったが確かにそれは優也に伝わった。
それから数時間が経ち、久しぶりの穏やかな一時を過ごしたところで優也の携帯に最後の戦いを知らせる着信音が流れる。
「それじゃあちょっと出掛けてくるから、母さんに今日の夜ご飯は俺の好物しといてくれって言っといて」
「それは無理ね。今日は私の好物を作ってもらう予定だから……お兄ちゃんの好物は明日の楽しみにしてよ」
稚咲はそう言いながら無邪気な笑顔を浮かべ、外に出ていく優也の背中を見送った。
そして稚咲に見送られた後すぐに俺は電話に出ると、声ですぐに伊集院さんからだと分かる。
「おはようございます。こちらの準備はほぼ完了なのですが、先ほど天音からの連絡で少し準備に手間取っているとの報告がありましたの」
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