最終章。春の入学式は桜の下で

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会長は用意は万端とは言っていたが、やはり1日で他の会社にあれこれ指示を出すというのは並大抵の事ではない。 「ですが優也様が到着する頃には必ず間に合わせると言っていましたので、今はそれを信じるしかありませんの」 「はい。ここまで来たら引き返せませんからね。それに会長は絶対に仕事はこなす人ですから大丈夫です」 それよりも心配なのは千佳と詩帆さんの方で、最初に十蔵さんと出会う確率が高いのは間違いなく千佳たちの方だ。 直接時間を稼ぐのは伊集院さんの手筈になっているが、万が一の事を考えると不安でならない。 「では優也様がビルに入ると同時にわたくしたちも動きますので、後ほど最上階でお会いしましょう」 しかしもう決まってしまった事を今さら変更という訳にもいかず、優也は小春の言葉に頷いた。 そして予定時刻のお昼になった頃に優也は伊集院グループの本社ビルへと到着し、その巨大な建物を前に額に汗が浮かぶ。 周りに建つ建造物もそれなりの高さのはずだがこのビルだけは一際目立ち、本当にこんな場所にいる相手に自分たちだけで立ち向かえるのかと考えてしまう。 伊集院さんは信用出来る人物だけに任せたいと言っていたが、これなら他にも心当たりのある人を連れてくれば良かったか。 そう思いながら呆然としていると、中から1人の黒スーツの男が優也の前に現れる。 「お待ちしておりました上谷優也様。こちらの急な都合に合わせていただき本当に感謝しております」
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