最終章。春の入学式は桜の下で

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なるべく怪しまれないように平然を装ったつもりの優也であったが、男はそれを許さず奥の扉を指差した。 「でしたらこの先にありますのでご安心を。すぐに案内しますのでもう少々お待ちください」 どうやらなにがなんでも俺を奥へと連れていきたいらしく、恐らくこれ以上何か言っても警戒されるだけだろう……。 優也はそれだけ分かると素早く腹を括り、今まで歩いてきた方に体を向けると……そのまま男に気付かれないよう一気に全力で走り出した。 しかし男の方も一定の間隔で後ろの確認をしていた為、ほんの数秒後には優也が逃げ出した事に気付き、耳に付けていたインカムと1階の廊下に男の声が響き渡る。 「くっ……目標の誘導失敗!直ちにBプランへ移行!繰り返す。目標の誘導失敗!直ちに1階にいる者はBプランへ移行!」 その声が聞こえた瞬間に優也はやはり罠だったと知ったが、目の前にはもう既に数人の男がこちらへ走ってくるのが見えた。 くそっ……挟み撃ちか。 さっそく一本道を逃げる敵を捕まえるのに最高の手段を使われ絶体絶命になりそうになるが、幸いにも気付いたのが早かったため横のエレベーターがある道へと逃げ込む。 よし……これでエレベーターに乗り込めばなんとか撒けるだろう。 そう思いながら優也はエレベーターのボタンを押したがまったく反応せず、階を表示するランプを確認したところでようやく動いてないことに気付く。 「ランプが点いてない……って事は走って最上階まで行けって事か!?」
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