最終章。春の入学式は桜の下で

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それならば仕方ないと優也は立ち上がり、移動しようとしたところで智恵が洋服のポケットからスッと何かを差し出した。 「だけどこれはまだ使えるから持ってきた」 そう言って差し出したのは先程のバズーカから放たれた弾と似た物で、大きさもほとんど同じに見える。 「これはさっきの予備弾だけど、投げても使える」 「えっ……じゃあこれもさっきのやつと同じくらいの威力なのか?」 思い返すだけであの電流は喰らいたくないと身震いしてしまうが、智恵は特に危険な物を扱っているという意識はないようだ。 そういうところは本当に尊敬するべきなんだろうが、俺には到底その強靭な心は身に付かないだろうな。 「威力は同じ。だけどバズーカで発射させない分どこかに当てないと爆発しない仕組み」 「動いてる相手に当てるとなると至近距離じゃないと無理よね……それにあんまり近くても今度は自分にも電流が当たる可能性もあるわけだし」 舞の素早い欠点の指摘に思わず頷いてしまい、その弾の使いどころはかなり限られてきそうだな。 けどとりあえず丸腰よりは断然上へ行きやすいのも事実なので、俺は智恵から受け取った弾を制服のポケットへと入れ、場所を移ることを提案する。 「向こうも連絡を取り合える手段は持ってるみたいだから、そろそろここに止まってるのは危険だな」
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