最終章。春の入学式は桜の下で

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「そうね……それに最初は相手も私たちを知らなかったから出し抜けたけど、2階からは同じ手は通用しないでしょうね」 「関係ない。ただ私たちは上を目指すだけ」 そんなカッコいい台詞をどや顔で言った智恵であったが、何故か俺の横にぴったりとくっつきながら制服の袖を掴んでおり、はっきり言うとものすごく歩きにくい。 「あの……智恵?もう少し離れて歩かないか?」 「……それはできない相談」 俺の質問に答える前の間が気になるが、智恵は本当に離れる気はないらしく今も無表情で辺りをキョロキョロ見回している。 そんな智恵の行動に優也はまさかとは思いつつも、滅多に見れない智恵の姿に興味本意で訊ねてしまう。 「あのさ。間違ってたら悪いんだけど、もしかして智恵……恐いのか?」 ピクッ。 「結論から言うとそれはありえない。私はこう見えて凄く強い。だから別に知らない人が襲ってきても3秒以内に倒せる自信がある」 いや、今なんかピクッって反応したよな?というか智恵って追い詰められるとこんな長台詞で言い訳するんだな。 そんな智恵の新たな一面を見れた優也は無意識に頬が緩んでいたらしく、いつの間にか智恵の袖を掴む力が強くなっていた。 「変な詮索はしないで……」
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