最終章。春の入学式は桜の下で

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その時の表情はいつもの智恵を知っている人しか気づかないような本当に小さな変化であったが、智恵の頬は朱色になっていた。 「ふふっ。逆に優也さんはこんな場所なのにいつもと変わらないのね?」 そして今度は舞から声が掛かるが、その声は真横から聞こえ、空いてる方は私の場所でしょうと言いながら腕を組まれる。 「さっきの話は無視なのか!?」 「だってそういう設定にしないと優也さんと腕を組むのも難しいじゃない?だから……私も恐いから優也さんの近くにいたいの」 「設定って言っちゃってるし!というかいつもと何ら変わりないのは舞の方だろ!」 どうにかこの状況を打開しようと優也はいつも以上に抵抗するが、それは逆効果となり……。 最終的には舞は顔を優也の腕に寄り添わせ、智恵は優也の手をしっかりと握りしめていた。 「なんでこうなるんだよ!本当に敵が出てきても知らないからな!?それにもし捕まって会長に何か言われても真っ先に2人を売ってやる!」 もはや完全に緊張感とは無縁の一時を過ごしていた3人であったが、優也の持っていた携帯がいきなり鳴り響き、慌ててボタンを押す。 「残念……そろそろ時間みたいね」 その際に舞がそう名残惜しそうに呟いたが優也の耳には届かず、優也の耳に届いたのは優希からの最高の情報であった。 「私だが、さっき舞からの報告でエレベーターの電源が止まっていると聞いたがそれは本当か?」
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