最終章。春の入学式は桜の下で

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ようやくここからの突破口が見えた優也であったが、電話をしている最中に智恵が無言で制服を引っ張っていた事に気付く。 「どうした?」 もしかするとまた何かおかしな事を言うんじゃないかと一瞬疑ったが、智恵は真剣な眼差しで俺たちの後ろの廊下を指差した。 「誰か来る……」 そう智恵に言われ優也と舞も後ろの廊下を見ながら聞き耳を立てると……まだ小さいが確かに人の足音がこちらに向かってくるのが聴こえてきた。 「ヤバい……真っ直ぐこっちに走ってきてるぞ!すいません会長、ちょっと緊急事態なんで電話切りますね」 「くっ……その場に私も居れば良いのだが、ここで見守ることしか出来ん事を許してくれ」 本当に会長はこの場所にいれないのが悔しいようであったが、会長にもやるべき事はまだたくさんあるはずだ。 「それじゃあ3階に上がりそうになったらまたこちらから連絡するんで、その時はシャッターの方をお願いします」 「分かってる……だが目標を優先し過ぎて無茶だけはするなよ」 会長の伝えたい事はよく分かったが、どうにもそう簡単には行かせてもらえないのがここの人たちなんだよな。 とりあえず無茶をしないためには、こうして俺たちを絶対に逃がさないという勢いで迫ってくる敵から逃げなくてはいけない。
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