最終章。春の入学式は桜の下で

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なので俺はすぐに2人を立ち上がらせると、出来るだけ声のトーンを下げながら指示を出す。 「2人は近くの部屋に隠れててくれるか?出来れば鍵つきの部屋がいいけど、なければ隅に隠れててくれ」 「それじゃあ優也さんはどうするのよ?まさかここに来て1人で敵の注意を引くとかは言わないでしょうね?」 舞の指摘は恐ろしいほどに図星で、思わず優也の表情は歪んでしまい、結局舞に押し切られた優也は3人で近くの部屋へ隠れる事に。 だが全員がここに居ると言う事は、部屋の外の状況を確認できないためこれでは迂闊に動くのも危険になってしまった。 「こんなところで足止めされてる暇はないんだけど……それに千佳の方もそろそろビルに入ってる頃だよな」 もしも向こうもこんな状況になっているのなら尚更心配してしまうが、今のところ会長からの連絡がないという事は順調に進んでいるんだろう。 そう今は信じて上を目指すしかないと自分を奮い起たせたところで、じいっとこちらを見る舞と視線が合う。 その視線の意味が分からず優也は首を傾げるが、舞も特に何も喋らずに視線を逸らし、今度は天井の部分に視線を移動させた。 「ここから動けないって言ってたけど、あれを通れば部屋の外を確認しながら3階まで行けるんじゃないかしら?」 そう言って見つめる先には通気口のような穴があり、ビルの大きさに比例するようにして穴も結構な大きさで出来ていた。
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