最終章。春の入学式は桜の下で

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この危険な場面での荒業に優也は一瞬頭を抱えるが、進む方向が分かったというのは大きな手柄だ。 なので優也はあまり深く言及することはなく、無茶はするなよと一言だけ注意して先を急ぐ事に。 そしてそれからも同じような事を繰り返しながら3階へ上がり、十分ほど移動したところでようやく目的のエレベーターが見えてきた。 しかしすぐには動かず、優也は周りを確認しながらエレベーターに駆け込むチャンスを窺う。 敵影はないみたいだけど、どうにも静かすぎるな。 向こうもこのエレベーターが動いている事くらいは把握しているだろうから、何人かの見張りはいそうなものだけど……。 そう優也が訝しげにエレベーターを睨みつけ、後ろに下に降りるべきか確認をとろうとして振り向くと、いつの間にか舞と智恵がいなくなっていた事に気付いた。 するとその次の瞬間には2人が部屋の扉から出てくるのが見え、どうやら目を盗んで下に降りていたらしい。 「あいつら……また勝手に」 もう降りてしまっては仕方がないため俺も2人に続くようにして通気口から出ると、舞は自分の口元に指を置いた。 「おかしいわね……上まで一気に行ける手段なのに、こんなに警備を手薄にしてるなんて」 「やっぱりおかしいよな……けどもしかしたら向こうも俺たちがこの場所を使うなんて考えてなかったんじゃないのか?」
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