最終章。春の入学式は桜の下で

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「間違えだと?そんな訳があるか。お前は昔からワシの事を憎み、ワシもそうなるようにお前を育ててきた」 そんな人を突き放してしまうような台詞であったが、俺はそんな十蔵さんを見ながら思ってしまった。 この人は……根っからの不器用なんだと。 自らを守るため、仲間を守るためならどんなに自分が汚れても構わず、もう二度とあんな事が起こらないようにするため……他人にも厳しくしてしまう。 それが十蔵さんの正義なんだ。 多分だけれども、伊集院さんもそれに気付いたんだと思う。 「わたくしは今でもお祖父様を心の底から憎んでいますの。先程の話を聞いてもその気持ちは変わりません……ですが、ほんの少し感謝もしていますの」 「感謝……だと?」 十蔵さんは驚いたように目を見開くと、その言葉が信じられないような表情のまま固まる。 「ば、馬鹿な……ワシはお前の人生を自分の夢のためだけに使ってきた、そんなワシに感謝だと!?」 偽善もいいところだと叫ぶと、伊集院さんに詰め寄りこれまでで一番の怒りが部屋に響く。 「お前ような人形には何もない!いや……何も知らないはずだ!他人を思いやる気持ちも、友をなくす悲しさも、それを表現できる感情も……知っているはずがない!」
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