くろやぎさんとしろやぎくん

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返事を送って一週間。 またあの白い手紙が届いた。 『返事をありがとう。僕のことはしろやぎと呼んでください。あなたをなんと呼べばいいですか?』 差出人の名前はしろやぎ。 どこかで聞いたことのある名前に首を傾げる。 なんだっけ…? 思いだそうと頭を悩ませる前にまだ続きがあることに気が付いて、思考はそちらに持って行かれた。 『ところで、君は何色が好きですか?僕は黒が好きです。』 しろやぎくん――そう呼ぶことにした――が、わたしの姿をきっと知らないことはわかってる。 けれど黒が好き、と言ってもらえたことが嬉しくて、心が軽くなるような気がした。 ふと、頭に一冊の本が浮かんだ。 「もしかして、しろやぎって、…“くろやぎさんとしろやぎくん”?」 友達の居なかったしろやぎくんが、見ず知らずの人に手紙を送る話。 それがたまたま同じような境遇のくろやぎさんで、最後はその二人が恋に落ちる。 そう考えてみれば、突然見ず知らずのわたしのところに手紙を送ってきたことも納得出来る。 ――でも、あれは確か幼い頃にお母さんに読んでもらった絵本だ。 十六歳の男の子が知っているものだろうか? 考えていても仕方がないか、と結論付け、わたしは黒いレターセットを取り出した。 本当は、このレターセットだって最初は白かったのに。 触った所から黒が滲み始めているしろやぎくんからの手紙をちらりと見て、わたしは小さくため息をついた。 .
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