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空いたグラスに ワインを 注ぐと 主人は ひじ掛けに 持たれながら グラスを傾けた。
『あいつとは…?お知り合いなのですか?』
『…僕の天敵みたいな奴だよ。ギンギラな頭したキザな嫌な奴でさ…。ホント 大嫌いだよ。』
きっと…と 彼は 話を続けた。
『あの子に 何かしてるんだ。』
『…可能性は高いですね。』
ジルドが そう答えると 彼は また 一気に ワインを飲み干した。
もしかして 自分は 勘違いしていたのだろうか?
明らかに これは 彼の ヤケ酒に付き合わされているようだ。
そうか…。
きっと 嬉しかった以上に 彼は 悔しかったのだろう。
ここで 慰めるのは 逆効果だろうし 今は黙って 彼の話に 耳を傾けていよう。
『ジルドにも 見せたかったよ。あの子の血の色は 本当に 綺麗だったんだ。鮮やかで 目眩がしそうな位に…。』
『いつか…私にも 拝見させて頂けますか?』
ジルドの言葉に 可愛い主人は ニッコリ笑って 答えた。
『ダメに 決まってるよ。ジルドだけじゃない。誰にも もう 見せたくないから…。』
『それは 残念です。』
ジルドも 微笑み返した。
『ジルド…。また 少しだけ 城を空けても良いかな?』
この前 帰宅したばかりだと言うのに もう 出掛けてしまうのか…ジルドは 落胆しながらも 無理に 笑って見せた。
『構いませんよ。気の済むまで 行ってらして下さい。』
『ありがとう…。ジルド。』
礼を告げた彼は満面の笑みだ。
この屈託の無い笑顔に 弱い自分が いけないのだ。
ついつい 甘やかしてしまう。
『僕はね…あの子の側に居たいんだ。』
大分 酔いが回ったのだろうか 瞳が 潤み始めている。
『だって 側に居ないと あの子は 僕の事を 忘れさせられるんだ。あの嫌な金髪に…!あの子が あんな男に 助けを求めるなんて 許せないよ!』
『リア様…。まさか…あの子に 茨を?』
『そうだよ。枷を付けた。あいつが 来なきゃ そんな事しなかったけど…。だけど あの時は そうするしか 無かったんだ。そうしなければ もう あの子を見付ける事なんて 僕には 出来ないから…。』
確かに 咄嗟にならば 仕方の無い判断だったろう。
けれど 彼が放つ黒い茨は…。
『…どうして 僕は…茨の王なの?黒い茨なんか…美しくも無いのに…。』
俯いた彼の前髪の隙間から ポロポロと雫が こぼれ落ちた。
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