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クロスは レナの部屋で 休んでいた。
『クロスは 暫く ここで 僕と 一緒に生活しようね。クロスのベッドなら 今 ルミアと数人が 運んで来るから 心配無いよ。』
『うん…ありがとう…。』
レナのベッドに 寝かせられたクロスは キュッと 唇を軽く噛み締めた。
思わぬ展開に 動揺している。
レナと 一緒に生活をしたら 首の茨に 気付かれてしまう。
寝巻は 丸衿だから 包帯が見えて当たり前だ。
怪我だと 主張すれば 絶対に手当てをするから 見せろと言われるに決まっている。
どうしたら 良いだろう?
最もらしい 言い訳が 全く思い浮かばない。
『…大丈夫?クロス…?何だか さっきより 顔色が 悪いみたいだけど。』
レナが 小首を傾げながら クロスの顔を覗き込む。
『あ…あのさ。レナ…僕なら 本当に大丈夫だから。ちゃんと 部屋に帰るし 一人で休めるよ。だから…ごめん!』
そう言い切ると クロスはベッドから飛び出し レナから逃げるように 部屋から出て行った。
『あっ!クロス…。』
レナが 慌てて 追い掛けようと部屋の外に 出ると 既に クロスの姿は 小さくなっていた。
大司教が 不安になるのも当たり前かも知れない。
クロスは ここ最近 急に様子が おかしい…。
やはり 監視は必要なのかも知れない。
ルミアは
―適当に すれば良いだろ?―
と 言っていたが 多分 彼も 今なら 同じように 感じるかも知れない。
明らかに クロスの態度は いつもの彼らしく無い。
記憶が 戻りかけている風でも無いようだ。
動揺している…?
何かに 怯えているかのように 見える。
そして その事を 自分達に 隠している…。
多分 概(おおむ)ね当たっていると レナは 確信した。
司教で ある以上 それ位なら 十分 読み取れる。
そして 大司教は クロスが 隠している何かを 知りたい。
レナは 今朝 大司教が 出してくれていた シスター達の手作りクッキーを ポリポリ かじりながら 考えていた。
勿論 クッキーは 頂戴したものだ。
司教の割に 手癖が 悪いのだ。
『なるほど…ね。クロスには 悪いけど この話…案外 面白いかも…。』
クスっと 笑って お茶を 啜った。
此処は 法に縛られた世界だけに 退屈する事も 多い。
お菓子の次に 好きなのは 刺激だ。
暫くは 楽しく過ごせそうだ。
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