舞い散る剣

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『ロザリー。法王の仕事はね…世界を護る前に 世界に住まうモノ達を護る事にあるのだよ。私は そう思っている。ロザリー、君にも出来ると確信しているよ。』 『大司教様…。私もまた、貴方に護られて来たのですね。』 ロザリーは 小さく呟いた。 完璧に 出来ているなど 豪語するつもりは 無いが 彼等の役に立てるように 最低限の配慮は してきたのだ。 それが 自分に出来る事だったから―。 大司教は 礼拝服のポケットに 手をしのばせた。 本当は ロザリーに渡したい物があったのだ。 後継者に引き継ぐ物なのだが これは 審判後に 渡さなければ ならないようだ。 ロザリーの この様子だと まだまだ 自分の存在を消す事は 無理そうだ。 大司教は 一人笑うと ロザリーが 何ですか?と 不思議そうに 首を傾げた。 『いや…何でも無いよ。』 ただ 嬉しくなってしまっただけだ。 自分を必要としてくれるモノ達と それを 護ろうとしてくれるモノ達の事を思うと 嬉し過ぎて 涙すら 込み上げてきてしまう。 決して失いたくは無い。 儀式後の身体を休めた後に 審判を 始めよう―。 『ロザリー。二日後に 審判の地へ向かう。準備を整えておくように。それから―。』 と 次の指示を出そうとしたら ロザリーは ニコリと笑って 立ち上がった。 『大司教様。準備なら とうに 出来ております。それから 審判に共に向かう司教も決定しておりますので 後は 大司教様が お休みになられるだけです。』 全部 ロザリーに言われてしまった。 『…そうか。分かった。では 二日間 皆も ゆっくり 休むように 伝えておいてくれるか?』 大司教の言葉に ロザリーは かしこまりました…と 一礼して 退室していった。 大司教は 窓から 風景を見渡した。 世界は 命に溢れ その命は 輝きを増しながら それぞれが 前進していく。 時の流れには 誰も逆らう事は 出来ない。 審判も また 抗う事が 出来ない。 ローゼンを 本当に救う方法は まだ 見付かってはいない。 自分は 本当に ローゼンを救えるのか? この世界を護れるのか? ローゼンは 創造の神が 創った存在だ。 その事実に 抗う事は 出来るのだろうか?― 不安は尽きないが 自分は 最後まで 抗い続けよう。 諦めた時点で 全てを失ってしまうから―
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