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痛みと熱…。
紅い血と銀色の髪…。
黒い茨に縛られている少年…。
紅く滲む血の色が 黒い茨に 纏わりながら ポタリ…と 伝い落ちる。
紅い雫が 地面に 輪を描いていく。
黒い茨に 囚われた少年は 頭をうなだれている。
意識は まだ あるのだろうか?
『…大丈夫?』
黒衣で身体をすっぽり覆った もうひとりの少年が 声をかける。
茨に囚われた少年は ピクリとも 動かない。
首に 黒い茨が巻き付いている。まるで彼を決して離すまいとしているかのようにも見える。
これでは 動く事も 喋る事も ままならないだろう。
つつっ…と 彼の首から 新しい血が 細い線を引いて流れて行く。
彼の銀色の髪が 僅かに揺れた。
くっ…と 声にならない悲鳴が 聞こえた。
助けたいけれど…。
しかし どうにも 手出しが出来ない状況だ。
どうすれば 良いだろう?
考えていると 彼の顔が ゆっくりと 上げられていく。
痛い筈なのに 苦しい筈なのに 冷ややかな表情で 真っすぐな視線を向けられた。
彼の瞳から 紅い血の涙が 白い頬に 筋を作って流れていく。
不謹慎な状況であるのは 十分に 理解しているけれど 彼を見て 美しいと思ってしまう。
思わず息を飲むほどに彼の姿が綺麗だったのだ。
右側の銀色の瞳と 左側の紅い瞳が妖しく光っていた。
その時、彼の唇だけが 僅かに動いた…。
―銀の薔薇―
銀の薔薇…?彼の唇は 確かに そう告げた。
すると 途端に 彼を縛り付けていた茨が パキリ…パキリと ちぎれて行く。
首も手足も 身体に巻き付けられた黒い茨が 彼の身体から 離れていくのだ。
解放された彼の身体が フワリと地面に 舞い降りるように 着地した。
僕が 驚きの余り固まっていると 彼が ヒタヒタと裸足で こちらに 向かってくる。
何故だろう?
傷だらけで 血だらけの彼の身体は 白く傷のひとつも無く綺麗だ。
傷は どうしたのだろうか?
半ば 見取れていた自分に 彼は 手を差し出した。
『…君に これを…。』
そう言った彼の手の平から 黒い茨が シュルシュルと 音を立てながら 狙い定めるように向かって来た。
驚く暇も無く、一瞬にして 僕の首に 茨が 巻き付いた。
『捕まえた…。』
そう言って 彼は フッと微笑んだ。
手綱のように 茨を操り自分の方へと引き寄せようとしている。
首が 締められ苦しくて 思わず 咳込んだ。
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