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ルミアと話していると 何処からか 甘く香ばしい匂いが クロスの鼻を くすぐった。
『すごい!良い匂いするね?』
クロスが 匂いの元を キョロキョロと 探していると ルミアが ああ…そう言えば…と 思い出したかのように 教えてくれた。
『今日は 祈りの後に シスター達が お菓子作りをするとか レナの奴が言ってたな?』
時折だが 遠方からシスター達が出向き 必ず 礼にと 差し入れをしてくれるのだ。
『レナが?僕…行ってくる!』
クルっと ルミアに背を向けて 食堂へ向かおうとすると 襟足を捕まれた。
『ダメだ!何、言ってんだ?お前…お祈りをサボったくせに貰うつもりなのか?そうゆうのを図々しいっつーんだ。』
グイッと 首が 僅かに締められた瞬間 クロスの胸が ドクリと 大きく鳴った。
痛みと あの熱が蘇り フラリと 身体が 傾いていく。
『どうしたっ?クロス?クロス!』
ルミアの声が 遠くなっていく…。
一体…僕は、どうしたんだろう…?
クロスは また 気を失った。
甘い香りに 誘われるように 僕は 目覚めた。
部屋は 既に 薄暗く 夜になってしまったようだ。
『気付いたのか?』
ルミアの声が 聞こえた。
少しだけ 視線を横に 移すと 心配そうな表情で 覗き込まれた。
ずっと 付き添ってくれたのだろうか?
『僕…。』
クロスが 起き上がろうとすると ルミアに 両肩を押さえられ 再び 無理矢理に 寝かされてしまった。
『クロス…お前さ。具合が 悪いなら 悪いって言えよな。いきなり倒れられたら 驚くだろ?』
全く!と 付け足された。
『ルミア…心配かけてごめん。今日は 本当に 怒られてばかりだね。明日からは いつも通りに出来るよ。実際 身体も 何とも無いし…至って元気なんだ。倒れたなんて 理由は分からないけど 本当に 平気だから…。』
『まあ…お前が そう言うなら 大丈夫なんだろうが…。夕食 貰って来てるから 食べたら また すぐに 休めよ。それから 鼻の良い お前なら 気付いてると思うが シスター達から お前に特別にって 差し入れもあるから デザートに食べろ。』
机の上に フキンが被せられた トレイが 置いてあった。
『ありがとう。ルミア…。』
クロスが ニコッと笑って 礼を言うと ルミアは スッと 視線を逸らし 別に…と 小さく呟く。
じゃあな…と 立ち上がって 照れ隠しするかのように 部屋から 出て行った。
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