黒い茨

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ルミアが 教会服に着替えている途中に 部屋のドアをノックされた。 こんな朝早くから誰だ? ルミアは、首のボタンを 片手で掛けながら ドアを開けた。 『おはよ。ルミア…。朝早くから ごめんね。』 あはっ…と ニコニコ笑いながら 立っていたのは レナだった。 『何だよ?俺…今 着替えてんだけど。祈りの時間には まだ あるだろう?』 『あ…うん。そうなんだけど…。大司教様が 話しがあるからって…言われて…二人で 来いって…。その…。』 レナの声が 段々と小さくなる。 ルミアの機嫌を損ねたと 思っているのだろうか? 大体、大司教に呼び出しされる事は、あまり良い事では無いのだ。 ルミアは 舌打ちしたい衝動を 極力 抑えて レナに尋ねる。 『大司教が 朝から 何の話しだ?』 レナは フルフルと 首を横に振りながら 答えた。 『ぼ…僕も 知らないよ。ルミア…また、大司教様を怒らせるような事したの?』 恐る恐る 上目遣いで 見上げるレナの視線に プチっと キレかけた。 『…なんで 僕まで 呼ばれるんだろう?』 その言葉に ガックリと 力が抜けた。 確かに…呼び出されると決まって説教されるからだ。 しかし…最近は特別に何も起こしてない。 むしろ…クロスの看病をしたりと、善い行いを心掛けている筈だ。 『お前…俺が いつも 問題を起こしてるみたいな事 言うなよな?』 『僕…いつ巻き込まれたんだろう?』 ポツリと レナが 呟く。 『おま…!人の話し聞けよな。』 チラッと レナに 軽く睨まれた。完璧に ルミアが 何か問題を起こし それに気付かぬ内に 自分は 巻き込まれていた…と 決め付けている目だ。 ルミアは 溜息を吐いて 肩を竦めた。 『はいはい。俺が 悪かった。お前は 何も関係無いから…。悪いのは 俺だから…。これで 良いんだろ?』 面倒臭そうに 言うと レナが ニコリと笑って 答えた。 『うん…そんな感じで良いよ。』 クルッと レナが ルミアに背を向けて 廊下を歩きだした。 ルミアは ドアを閉めて レナの後を 渋々と着いていく。 何とも 始まりの悪い朝だ…。
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