蕾―つぼみ―

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『ローゼン…。』 リアの声は 涙混じりだ。 『リア様…。申し訳ありません…。』 キラとラキが 心配そうに覗き込む。 『ううん。君達のせいじゃない。ローゼンは 元々 僕なんか 相手にしていなかったから…。だけど…僕は…。』 また 奪われてしまった…。 あの金髪に…。 堕天使ルシファ―… 彼だって 自分を敵だと思っていない。 情けない…屈辱に 気が狂いそうだ。 『ねぇ…取り込み中…悪いんだけど…。』 教会服に身を固めた 小さな司教の方に 話し掛けられた。 『…何?』 ギロッと睨みつける。 『ええっ…と、別に 睨まなくても良いよね?僕達は ほら…味方だから…。ねっ?』 『リア様に 気安く話し掛けるな。』 ラキが サッと リアの前に出る。 『だから…ホント…ちょっと 話をしたいだけなんだって…!ルミア!少しは 手伝えよ!』 小さな司教は振り返り様に叫んだ。 ルミアと 呼ばれた司教は ん?と 首を傾げて見せた。 『レナ…。ここは 私が…行くよ。』 ロザリーと言う男が レナと交代する。 『リア…。銀の薔薇を救う方法は まだ あるよ。だから 君が持っている情報と 私が持つ情報を交換し合わないか?』 ロザリーの後ろで 小さな司教はうんうんと頷いていた。 ルミアは じっと こちらを伺っている。 『僕も 知りたいです…。少しでも リア様の役に立ちたいから…。』 キラが ポツリポツリと呟いた。 リアは ふう…と 溜息を 吐いた。 『ロザリー。あんたは ルシファーに仕えてたっぽいけど…信頼出来るの?』 裏切り者は 所詮 裏切り者でしか無い…。 けれど 彼は あの堕天使ルシファーを裏切った男だ。 色んな人物を見てきても そんな人物は 初めて見る。 『信頼して欲しいよ。』 ロザリーのその答えは、賭けになるかも知れない。 しかし 彼が、した行為は信頼に値するようにも思える。 『…分かったよ。裏切りは 無しだよ。』 『当たり前だよ。私は もう この世界にしか 居場所が無いからね…。聖職者として 使命を果たす事しか 考えていないから…。』 ロザリーの真剣な眼差しに リアは 頷いた。 何から 話したら良いだろう? あの時の事を…。 遠い昔を リアは 振り返った。
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