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レナと二人 大司教の個室の前で どちらが ドアをノックをするかで 揉めていた。
『ルミアが しなよ。僕は あくまでも 伝言係りなんだから。』
『何でだよ!だったら お前が ノックするのが 筋だろうが?』
ううっ~と 互いに 睨み合っていると 扉が 開かれた。
二人が ハッ!と 扉に 振り返ると 大司教が 立っている。
『お前達…何をそんなに 揉めているのだ?喧嘩は してはならないぞ。いいから…早く 入りなさい。』
穏やかな表情で言われ ルミアとレナは 顔を見合わせた。
いつもは 怖い顔で 見るのも嫌なのに 今朝の大司教は 穏やかで 優しい表情をしている。
『声が 聞こえたからね。もう来るかと 思って お茶を煎れて置いたのだが 少し 冷めてしまったようだ。煎れ替えよう。』
見ると ハーブティーが 入ったカップと ポットが 並べてあった。
昨日、シスター達が 作ったクッキーまで 用意されている。
大司教が カップを下げようと 手を伸ばした瞬間に ルミアとレナは その手を掴んだ。
『どうしたのだ?二人とも…?』
それは こっちの台詞だ!と 言いたい所だが 二人は ニコリと笑って同時に答えた。
『…お気遣いなく…。』
『そうか…?お前達がそう言うなら まあ…いいのか。』
そう納得したらしい 大司教は ソファに座った。
ハーブティーの香りを優雅に 楽しんでいる様子に 二人は ホッと 胸を撫で下ろした。
取り敢えず する事も無いので ルミアとレナは 顔を見合わせながら ハーブティーを手に取り 啜った。
冷めていても美味しかった。
次に 滅多に お目にかかれない シスター達の手作りクッキーを 食べようと 二人揃って クッキーに手を伸ばしかける。
『所で…。』
大司教が 言葉を発した為 クッキーは 断念しなければならなくなった。
こんなに近くにある クッキーが キラキラと輝きながら 遠退いていく。
特に レナは 酷く落胆していた様子だった。
彼は 大のお菓子好きなのだ。
両手を膝に置き 大司教の話を聞く体制を整える。
大司教は そんな様子を確認するように 二人を見詰めた。
『所で…今朝 祈りの前に お前達を 呼び出したのは 折り入って 頼みたい事が あるからだ。』
頼み事…。そんな事を言われるのは 初めてだ。
『クロスの事なんだが…。』
そう言って 大司教は 言葉を僅かに 詰まらせた。
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