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特に 報告は していなかったが 昨日 クロスが倒れた事を 大司教は 知っているのかもしれない。
シスター達が 話したのだろうか?
ルミアが 思い起こしていると 大司教が 話を続けた。
『お前達も 既に知っている事だが クロスは 私が ある人物から 預かっている子だ。』
それは この教会の皆が 知っている。
知らないのは…クロス本人だけだ。
彼には ここに来る前の記憶が無いから…。
『クロスも 最近は 薄々 気付いているのでは 無いかと思ってな?その…心配で仕方ないのだ。』
それは それで 良い事なのでは 無いだろうか?
記憶が戻れば 彼の使命も取り戻せる。
在るべき世界に 帰れるのだ。
それが クロスにとって 一番 良い結果になる筈だ。
『…大司教様は クロスの記憶が 戻る事に 反対なんですか?』
レナが ストレートに発言をした。
こうゆう所は すごいなと思う。
それに 大司教の話し方に 同じような 疑問を感じていた事に 少し安心した。
『…レナ。君の言う通り 私はね…クロスの記憶を戻したくない。どんな手を使ってもだ。』
大司教の穏やかだった表情が 険しくなっていく。
『…俺達に どうしろと?』
ルミアが 尋ねると 大司教は 真っ直ぐに 見詰め返し 答えた。
『クロスを四六時中 監視して欲しい。何か 異変が あれば すぐに私に 知らせなさい。本来なら 私が やるべき仕事なのだが…立場上 あの子を 側に置いておけない。君達なら 今までのように 常に一緒に居ても 違和感が 無いだろう?』
クロスを四六時中…監視…。
大司教は 何故 そこまでやろうとするのだろう?
『何故…監視役を 僕達に?』
レナが 尋ねると 大司教は フッと 微笑んだ。
『…それは あの子が 一番 心を開いているのが 君達だからだ。』
レナが 唇を噛み締めている。
それは 自分達だって同じだ。
こんな風に 監視を命じられて 複雑な気持ちにならない方が おかしい。
大司教は 知っていて 敢えて 言っているのだと確信した。
ルミアとレナは 口を閉ざした。
『これは 私からの密命だ。悪いが 従ってもらおう。それと…クロスは 我々が 思う以上に 特別な子なんだよ。いずれ 分かる時が 来るかも知れないな。』
ルミアとレナは 一礼して 退室した。
何かが 変わりはじめている…。
嫌な方へ 流れていく気がした。
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