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「とは言え…こんなチンピラの為にえらい損失だな。三十万ドル分の薬に警察への揉み消し料十万ドル。そして…十年掛けて育てた殺し屋一人…か」
初老のスーツ男はそう言うと、感慨深げに倒れた人影を見つめた。
すると若いスーツ男は人影に近寄ると、人影が被っていたパーカーのフードを剥がした。
露わになった人影の顔は、まだ幼さが残る少年の様だった。
「…チッ、こんな三下相手にヘマしやがって。やっぱまだまだガキだったな」
若い男はそう言うと、死体になった少年の足首を掴んで、無造作に引きずって運び始めた。
その様子を見た初老の男は、隣でタバコを吸いながら立っていた中年の男に尋ねた。
「バート、ハウンドを育てたのはお前だろう?何か思う所は無いのか?」
バートと呼ばれた中年の男は、タバコを地面に落とすと足で踏み消し、大きく溜め息を吐いて、無機質な表情で返した。
「……つまらねぇ死に方させちまった…そんぐらいですかねぇ…」
「…そうか…まあ代わりは幾らでも居るからな…。生きてりゃ猟犬、死にゃ骸ってな…」
皮肉るように言うと、初老の男は路地裏の奥の闇に消えて行った。
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