Prologue-HOUND-

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残されたバートは、若い男の手によって黒い袋に詰め込まれる男の死体と、それと一緒に詰め込まれる少年の死体を黙して見つめていた。 その表情は、深く思い詰めている様にも見え、何も考えていない様にも見える、感情の無いポーカーフェース。 やがて、袋の口が閉じられ、少年の姿が見えなくなると、バートは若い男に向かって言った。 「じゃあなアール、後始末頼んだぜ」 「ういっす」 若い男は気怠そうな返事を返し、男と少年の死体が入った袋を引きずりながら路地をトボトボと歩いて行った。 「……じゃあな…アキラ…」 バートは若い男に引きずられる少年の入った袋を見つめ、小さく呟いた。 そしてバートは再びタバコに火を点けると、赤く小さな明かりを燈して路地から去って行った。 誰も居なくなった路地裏には黒く変色し始めた生々しい血痕が、此れ見よがしに残っていた。
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