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キキーッとブレーキがかかる。
あまりに突然だったから身体のバランスを崩してしまった。
慌てて手すりに掴まろうとして伸ばした手は空を切る。
これから襲い掛かるであろう痛みに目を閉じた。
――トサッ。
背中が何かに支えられる。
痛みもない。
何で‥‥?
「あんたの話も聞かせてくれ」
彼の声が耳元を掠めた。
まさかと思い、目を開けるとやっぱり彼が支えてくれていた。
あの、綺麗な黒髪が目の前で揺れる。
『ありがとう』
微笑むと電車の扉が開いた。
「行こうぜ」
『―――!?』
さっきは何も言ってくれなかったのに。
「おい、行かないのかよ」
彼はもう扉を跨ごうとしていた。
『ちょっ‥‥、行くに決まってるじゃない!』
アタシは慌てて彼の隣についた。
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