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俺は遠退く男のシルエットを見つめながら、自分の命運を握る男が誰なのかを考えた。
自分の今迄の行いを考えると、もし男がその被害者であれば、ポイントを逆に倒せば復讐が叶う事になる。
そしてまた、この小さな町の人間であれば、自分の事を知らない者は無いのだ。
唇が乾いている。
俺は舌で湿らせると、強く願った。
どうか俺を……。
僕は目の前のポイントを見つめながら、考えていた。しかし、時間はもう無い。
乾いた唇を舌先で湿らせる。
僕はポイントに手をかけた。
声が頭の中に響く。
彼を殺せ、彼を殺せ。
僕の手で、彼に死を。
彼を殺せ、彼を殺せ。
僕の手で、俺に死を。
爆音が響く中、男が近づいてくる。
火薬の臭いが広がり、土煙と砕けた岩の破片で視界が遮られる。
それでも確かに、男の姿ははっきりと見えるのだ。
全てがスローだった。
男の顔が見えた。
と同時に、全ての動きが正常に戻り、俺の身体は爆風に飲み込まれた。
岩盤が崩れ落ち、全てが土に還る。
俺も、俺と同じ顔をした、男も。
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