トロッコ

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社長の死体が、いや、残骸が見つかったのは、それから数日後の事だった。 そして今、社長の椅子には、車椅子の青年が座っている。彼もまた、戸惑いを隠せないでいた。 遺書には、彼に自分の地位と財産を譲り渡すと書かれていたのだ。 そんな彼に、年寄りの一人が声をかけてきた。 「あんたは……そうじゃ、確か社長が子供の頃、一緒にいた……」 「はい、あの時は仲良くさせて貰ってました。ただ、あんな事があって、彼は人が変わってしまった。誰の責任でもない、ただの事故だったのに……」 「そうじゃ、そうじゃ」 青年と社長は幼馴染みで、毎日のように一緒に遊んでいた。 あの日は、近づいてはいけないと言われていた炭鉱に、子供達だけで近づいたのだ。 そして事故が起こった。 使われなくなった古い坑道の入り口。そこはその日、爆破する事になっていた。だが、そんな事を子供達が知る筈もなく、悲劇は起こったのだった。 泣き叫ぶ子供の声に気づいた大人達が慌てて向かうと、黒く汚れた幼き日の社長が、その入り口を塞ぐ土砂を、小さな手で掘り起こそうとしていた。 そこには、下半身が埋もれぐったりとした少年。 大人達が社長を抱き抱え、土砂を掘ると、他にも数人の少年が、遺体となって出て来たのだった。 そのすぐ後、社長はこの町を離れた。 ショックにより、記憶の一部を失ったとだけ風の噂で聞いていた。 この町に戻った時、彼の記憶は戻ったのだろうか? それとも……。
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