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僕は今、鉱山の坑内にいるようだ。
まだ生きている鉱山なのか、既に閉鎖されたものなのか、それは分からない。
何故なら此処には僕の他に人の姿はなく、誰かに此処が何処なのか尋ねる術はないからだ。
ただ、点在する薄汚れた鶴嘴(つるはし)やヘルメット、そして今、僕の足の下にある、運搬用貨物のものと思われる線路に似たレールが、鉱山もしくはそれに類するものだと予想させたのだった。
僕が何故、此処にいるかは、全く分からない。
少し前に目を覚まし、この見知らぬ場所で様々な考えを巡らせていたのだが、一人考えても何一つ理解する事は出来ないでいた。
とりあえずは此処から出なければ。
そう思い、このレールを辿れば外、もしくは人と連絡を取る事の出来る場所に出る筈だと考えて、レールの上を歩き始めたのだった。
しかし景色に何ら変化はなく、自分の考えが間違っていたのかもと思い始めていた頃、微かに人の声と思われる音が聞こえてきた。
僕は漸く救いを見出だせた思いで、歩き続けて重くなった足を、自分の精一杯のスピードで前に振り出したのだった。
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