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俺は今、何処か地下の洞窟のような場所にいる。
最初こそ身体を縛られてパニックに陥っていたが、その事以外で俺に危害を加えるようなものはなく、一先ず自分の気持ちを落ち着かせると周囲の状況に視線を送ったのだった。
薄暗いこの場所の床にはレールが敷かれており、俺はそのレールの上に固定された椅子に縛り付けられているようだ。
工事中の地下鉄かとも思ったが、壁は剥き出しの地層に、人為的に設けられた補強が通っているだけで、地下鉄というよりは開通途中のトンネル、もしくは鉱山のようなものだと思われる。
どちらにしろ、人間の手が入っているものである上に、自分をこんな状況にした人間がいる以上、何処かに誰かがいる筈だ。
俺はその気配を探ろうとした。しかし、全てが死に絶えたかのように何の気配も感じる事が出来ない。
「おーい!!」
業を煮やした俺は、そう声を発していた。
坑内を自分の声が反響して、耳鳴りに似た振動が返ってくる。
俺はそれに顔を顰(しか)めた。
その時、前方から微かな気配を感じたのだった。
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