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音のした方向に足を急がせる。
するとレールが三本に分かれた分岐点に出て来た。
今では音は人間の、それも男性の声だとはっきり認識出来るものになっており、その声は右側のレールの先から聞こえてくるのだった。
僕の足は、更にそのスピードを増した。
しかし、真ん中のレールの先に、その進行を遮るように鎮座している岩に、違和感を感じるものを見つける。
それは貼紙だった。そこには、
『○月○日**:**、爆破。坑内カラ退避ノコト』
まさか、今日な訳がない……そう思いながらも、僕の頭には嫌な予感しか浮かばない。
とりあえずこの先にいるだろう男性に話を聞き、此処から逃げなければ。
そう思い、更に足を急がせた。
足の下のレールに、何かが後方から走ってくる振動が伝わってきていた。
その人物は椅子に座っているようだった。
何故、こんな状況で椅子になど座っているのだろう。
その疑問は、闇の中でもその状況が見て取れる程の距離まで彼に近づくと、すぐに解けた。
彼は椅子に縛り付けられ、その自由を奪われているのだ。
その時、遥か後方に爆音が響き、僕の身体が凍り付くのと同じように、椅子に縛り付けられた男性の身体も硬直するのが分かった。
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