トロッコ

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「誰かいるんだろ!!? 頼む! 助けてくれ!!!」 俺はその気配に力を得て、必死で声を上げた。 ふと、その気配の主は自分を縛った人間かも知れないという考えも過ぎったが、この状況で自分を追い込むような事は考えたくない。 その考えは振り払い、また声を上げた。 その気配も俺に気づいたらしく、近づいてくるスピードが速まった。 俺を縛った人間なら、足を速める事もない筈だ。 助かった、そう思ったが、何故かその人物の足が止まる。何かを見つけて、それに気を取られているようだ。しかしまた、先程よりも早いスピードで、こちらに近づいてくる。 何を見つけたかは分からないが、スピードを上げた以上、良い内容ではないのは確かだろう。 その人物の黒い影が、漸く男だと認識出来る程に近づいた時、その遥か後方から爆音のような音が響いた。俺は身体を一瞬、硬直させる。俺の前にいる男もその足を止めた。 土埃と火薬の臭いを孕んだ風が、俺に恐怖を与える。と同時に、もう一度周囲の様子に目を凝らした。 そして思い出したのだ。 つい先日、俺は自分の所有する鉱山の閉鎖を決定した事を。 それは親父の死後、遺産として譲り受けたものだったが、もともと利益等出ず、何故親父が手放さないのか不思議に思っていた場所だった。 だから俺はもっと有意義に使おうと考えた。 ただ、坑道があっては危険な為、爆破して潰す事にしたのだ。
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