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後数メートルの所で誰かの腕がまわされ、胸の中に入った。
まぁ、誰かは分かってはいる。
「どうして逃げるんだ?翠。」
自分がすっぽり入る大きな身体、そしてこの声。
それは紛れもなく、僕の敵、旺彌のものだった。
「あなたがいなきゃ、もっとゆっくりできましたね。」
と皮肉をたっぷり込めて言う。
学食では、極力会いたくなかった。
今でさえ、僕に対する罵詈雑言の嵐がすごいわ、あまりのショックにお倒れになった、ファンの方が保健室に運ばれてくわで、被害増大だ。
「あなたが近づくと僕の危険性が高くなるって自覚してやってるでしょう。」
テメェ、コンクリート詰めで海に沈めるぞ。
とつけたくなったけれど、一応母親が昨日出した、暴言禁止令を律儀に守る。
母さん、これを見越したな。
「危険にさらした方が、俺に落ちてきやすいだろ?」
旺彌はさも、当然なような顔をしながら言った。
こいつ、最悪だ。
でも、今はそんなこと
言っている場合ではない。
この状況を打開しなければいけない。
僕は長くため息をついた。
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