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電話は母からだった。
内容は迎えはよんだからこのホテルまで来てほしいというもの。
僕は母には逆らえない。
だから、行きたくないという感情を押さえつけ、仕度をする。
前髪を上げてムースで固め、眼鏡とマスクを外す。
するとアーモンド型のぱっちりとした二重の目に黒い瞳、ピンクの唇にキメの細かい肌が露出される。
しかも、目元の泣き黒子のせいで、無自覚にフェロモンが垂れ流されている。
母とは違う、女顔。
この顔は今は亡き実父から受け継いだ顔。
このせいで、何度危ない目にあっただろう。
何度悲しい目にあっただろう。
僕は鏡に写る父によく似た顔にムッとしながらスーツに着替えた。
裏門に向かい停めてある迎えの車に乗り込む。
運転手さんは僕が乗り込んだのを確認し、ドアを閉め、自らも運転席に座って、車を発進させた。
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