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「少し熱もあるようだから、これでも乗せてちょっと寝てな。」
そう言って、お婆さんはあたしのおでこになにかヒンヤリとした物を乗せると、ゆっくりと立ち上がった。
(濡れタオル・・・)
お婆さんの優しさに、心が温まる。
「ありがとうございます。」
「いいんだよいいんだよ、それより旦那、最近は流行りの病もあるから、気を付けな。」
そう言うと、お婆さんは襖を静かに開けて、その先に続く廊下へと出ていった。
(ん?旦那・・・・・・?)
きっとあれだよね、ジョークだよね。
取り敢えずそこは気にしないようにしたが、まずは一つ。
「これは映画のセットなんかじゃない。」
声に出して見ると現実味が増した。
人が住んでいるセットなんて聞いたことが無い。
ならばやはり、あたしは時空を越えてしまったのだろうか?
いや、やっぱり有り得ないよね。
タイムスリップだなんてそんな、夢みたいなこと絶対に無い。無いと信じたい。
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