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(なんであたし、こんな事になってんだろ)
ちょっと恥ずかしくなって袖口で涙を拭うとおでこから濡れタオルを取り、気だるく感じる重い体を静かに起こした。
ふと目に入ったのは、目の前の壁に掛けられた、一枚の掛け軸。
裸体の美しい女性が、水辺で泣いている情景が描かれていた。
(きれー)
何となく惹かれる物があり、あたしは布団から這いずり出ると掛け軸をまじまじと見つめる。
白く透き通った肌に、濡れたような黒く長い髪。
何処か違和感を感じる。
(あっ!)
よく見ないと分からないが、女性の瞳は、蛇にそっくりだった。
伏し目がちなのにはっきりと分かるのは、瞳が強調されているからだろうか?
黄色く、妖しく、艶めいた瞳に益々引き込まれる。
と、一瞬目があった気がした。
(え)
背中に冷水をかけられたような気になる。
(まさか、ね)
もう一度見ても、伏し目がちな目は下を向いたままだった。
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