53人が本棚に入れています
本棚に追加
「良かったね」
彼の言葉は、まっすぐに裕太に向けられていた。
ニャンと裕太は彼の方を向いて鳴く。
彼は高校生だった。
制服はコートに隠れていたけど、私の母校の鞄を持っている。
眼鏡をかけた、賢そうな男の子で、その雰囲気が、どこか変わった感じがした。
「あ…ごめんなさい。あの、この子の飼い主で…」
説明しようと言いかけると、彼は私を押し止めた。
「散歩したくなったんですよ、きっと。月が綺麗だったから」
そう言われて、空を見上げると、確かに満月で、月が輝いていた。
むしろ…その月を見上げる彼に、惹きつけられた。
最初のコメントを投稿しよう!