一人

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「良かったね」 彼の言葉は、まっすぐに裕太に向けられていた。 ニャンと裕太は彼の方を向いて鳴く。 彼は高校生だった。 制服はコートに隠れていたけど、私の母校の鞄を持っている。 眼鏡をかけた、賢そうな男の子で、その雰囲気が、どこか変わった感じがした。 「あ…ごめんなさい。あの、この子の飼い主で…」 説明しようと言いかけると、彼は私を押し止めた。 「散歩したくなったんですよ、きっと。月が綺麗だったから」 そう言われて、空を見上げると、確かに満月で、月が輝いていた。 むしろ…その月を見上げる彼に、惹きつけられた。
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