Moderato

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チャイムの音が聞こえて浅い眠りから醒めると、薫はいなくなっていた。 「お目覚めかしら?」 ベットとベットを仕切るカーテンが開き、保健医が顔を覗かせた。 「すみません、勝手に…。」 「いいのよ。具合は?」 「大分よくなりました。」 ゆっくりと体を起こし、ボサボサになっていた頭を直した。 「一緒にいた子なら教室に返したわよ。」 ドキっとした。 私は思わず保健医の方を見た。 「ついてるって言い張ったんだけど…優しい彼氏ね。」 彼氏…。 他人の目にはそう映るんだ…。 「あの…じゃぁ失礼します。」 「お大事にね。」 私は否定もせずにこの微妙な空気から抜け出すべく、急いでベットから降りて上履きをはいた。 ぺこりと頭を下げ、私は逃げるように保健室を出た。 休み時間の廊下はただ騒がしくて、私は廊下に出ている生徒の間を擦り抜けるように歩いた。 まだなんとなくふらふらした。 教室…戻りたくないな…。 足がぴたりと止まってしまう。 教室に戻って有難うと言いたいのに。 また気まずくなるのが怖くて。私は振り返り、階段を上がった。
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