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『俺、ドイツ行くことになった。』
『…ドイツ?』
『プロになりたいから。』
『そっか…。』
『本泉も頑張れ。』
『…。うん…。』
行かないで。
置いていかないで。
「…み…本泉…。」
「…!」
ばちっと目を開くとそこには薫…ではなく、担任が机の前に仁王立ちで立っていた。
「あーついてない。」
私は結局、目が覚めるような量の課題を出されてしまった。
「まさか鬼の桂木の英語で寝るなんて…不覚だ…。」
「何度も起こしたんだよぉ。」
由美は笑いながら帰りながら買った缶のココアのフタを開けた。
あんな夢を見るなんて…
小学生の私と、薫。
「あすか、薫様と帰らなくてよかったの?」
「は!?いいに決まってるじゃん。何言ってるの?」
「だって薫様、クラスの女子から一緒に帰ろうって誘われたのに断ってたし…あすかと帰りたかったんじゃない?」
「まさか…。ないない。」
きっぱりと否定すると由美は不満そうに首を傾げた。
「あすかも、薫様も素直じゃないんだから。」
私は思わずその言葉に笑ってしまった。
本当に私達はお互い様という言葉がよく似合う。
小さい頃はいつも喧嘩ばかりしていてピアノの先生に
『似た者同士だ。』
とよ怒られた。
10年経っても、私達はお互いに大人になれていないようだ。
私ははちっとも変わっていない。
薫だって。
なのに何で?
一緒にいるのが辛いんだろう…。
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