始まり

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『メガネは自分を守る盾』 レンズ越しに見える人、景色はどこか違う世界を見ているようで、メガネをかけている自分は『本当の私』じゃなくて、自分を守るためにつくった『違う誰か』 そう思うようになったら、だいぶ心に余裕ができた。 『本当の私』からは想像がつかないくらい会話がスムーズにできるし、場の空気が読める。冗談だって言えるようになった。 ただ、表情は。 こればかりは仕方がないから、変に取り繕わないで無表情キャラってことに周りが位置付けしている。 ぴくりとも動かない表情筋は自分でもおかしいと思う。それでも周りは何もつっこまない、それが大人の対応だから。 子供みたいに無邪気に、無神経に相手に突進しない。けど、それと同時に私と周りには相手の内情に関わらない、という大きな壁が目に見えていた。 眼鏡をかけている一番の利点。 それは、視界が悪くなるっていうのもあるけど『違う誰か』になっている間は何か失敗したりしても、 『これは本当の私じゃない。傷つくのは私じゃない、違う。大丈夫だ。頑張れ る』 っていう逃げ道があること。 逃げてることはちゃんとわかってる。 けど、自分を守れる心の隙間があるから私はなんとか人と関わっていけている。 なんとか崩れずに立っているんだ。
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