日常

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対人恐怖症は兄と幼なじみのおかげでなんとか日常生活を不自由なく送れる程度にはよくなった、だけどどうして発症したのか分からない。 よほどショックなことがあったのか、幼いときの記憶はあやふやで覚えていない。 発症したのは子供の頃。 微かな記憶でわかるのはそれくらいしかない。 あ、わかることはもう一つあるか。 記憶があいまいなのはきっと自己防衛のための現実逃避、だということ。 日向葵〔ひなたあおい〕25歳。 苗字と名前の漢字をあわせて読むと〔ひまわり〕って漢字に似てるってことで、知人から〔ひま〕って呼ばれていることが多い。 初対面の人とかによく名刺で私の名前を読み間違えられる。 向日葵は太陽に向かって咲く花なのに、本人は感情の乏しい無表情人間。 しかも、思考回路が暗い。 名前負けしてる、自分の名前がきらきらしたものに似ていればいるほどその差異は強調される。 「はぁ・・・」 暗い思考になり、考えを払拭するためにぶんぶんと首を横に振った。
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