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ふっと短く息を吐き、ちらっと掛け時計を見ると短針が2、長針が6を指している。つまり時刻は2時半を回っていた。
「5分くらいか・・・」
あー、まだ休憩始めてからそんなに時間経ってないや。
と、ぼんやりと秒針が静かに動く時計を眺めていた。
「・・・」
いつもこの時間になると少し休憩ができるから休憩している。
本当は悠長にこんなことしてる暇はない。仕事しなきゃいけない、けど休まなきゃいけない。
『休憩できるときには必ず休憩しろ』
『体は大事にしろ。少し休め、手を止めろ』
『迷惑かけたくないなら体調管理くらいしっかりしろ。いきなり戦力外になられたほうが迷惑だ』
私が新人だった頃指導係をしてくれた先輩がいつも言っていた言葉だ。
彼はいつもそれらを口癖のように言っていた。その気遣いがとても優しくて、温かかった。
その先輩は、正論と本音しか言わないとても実直な人だ。で、他人にも自分にも厳しい。
それだけ聞くと関わり辛い、とか思うかもしれないけど世渡り上手というか彼は人間関係は割と円満だと思う。
だからってわけじゃないけど、そんな人からの気遣いは本当に温かさがある。普段冷酷って思われがちな人だけど根は優しい人、だと思う。
その人は今は副編集長で、上司と部下って関係なだけだから私が今考えていたのは仕事をしている面での彼の性格だけだ。
でも、仕事に対する姿勢も成果もすごい。だからそんな尊敬できる先輩の言葉を今でもできるだけ守っている。
…できるだけ。
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