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この国に自由は無い。
力の無い者の選択肢は-死-だけだ。
ソリチュード王国先代のカリファ王は人望が厚く、国民を第一に思っている王だった。
カリファ王が統治していたころの国内は、商業が盛んで戦争も無い豊かで経済の潤っていた。
しかし、数十年前カリファ王が何者かに暗殺され、一人息子のカビーアが新国王として即位してから全てが変わった。
カビーア王は先代のカリファ王とはまったく違う思想をもっていた。
「この世は弱肉強食、自分はその王者。弱者は強者の奴隷。」
ある日カビーア王は、とても幼稚な、まるで子供の戯言のようなことを言い出した。
「本日より、余の命を果たせなかったものは死罪とする。」
その言葉は王国全土に放送されたが、国民は皆呆れ相手にしなかった。
しかし、その翌週悲劇は起きた。
カビーア王より国民へ初めての命が下された。
「70歳以上の国民、皆に告ぐ。本日中に私財を全て献上せよ。」
当然、私財の全て献上など、馬鹿げた命令を聞く者は1人もいなかった。
そもそも本日中に献上するなど王都に住む者以外、時間的に不可能であった。
そして翌日、国中から悲鳴が聞こえた。
ソリチュード王国に住む70歳以上者、全員の頭部が一斉に吹き飛んだのだ。
当時、国民は神の仕業かと慌てふためいたが、のちに王の口から原因が明らかになる。
ソリチュード王国の国民には、先代カリファ王よりも何世代も前から、人口把握や犯罪抑止の為に、生まれた瞬間から脳にチップを埋め込むことが義務付けられていた。
もちろん、この悲劇が起こるまで国民の誰も爆発機能がついていることなど知る由もなかった。
つまり、俺達はこの瞬間から「命」という弱みを握られることとなった。
そして、カビーア王は自身の思想通りの弱肉強食の世界を作り出したのであった。
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