0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は、泣いていた。
記憶の中に蔓延る、数々の後悔。
それらを省みて、泣いていた。
どれだけ泣いたか分からない。
目は腫れ、顔は赤くなり、もはや誰かに見せられるような顔では無くなっていた。
「どうせ、誰にも会わないからいいんだけどね……」
ひとりごちて、再び涙。
理由は分からない。
ただひたすら、泣いていた。
その時――涙で濡れたこの部屋に、ノックの音が響いた。
■□■□■□■□
僕には、中学時代からの絵描きという夢があった。
しかし、絵を学ぶ機会と環境が地元には無かった。
それでも、絵が好きだった僕は高校入学を機に独学で絵を描いた。
モデルは街並みだったり、たんほぽの綺麗な丘だったり。
風景を描くのが好きだった。
決して周囲からの評価は良いものではなかったが、ただ一人、僕の絵が好きだと言ってくれた人がいた。
そして、彼女と僕が恋仲になるのに、そう時間はかからなかった。
彼女は、強がりも愚痴も含めて僕を受け入れてくれた。
僕にとって彼女が
彼女にとって僕が
最初で最後の恋人であって欲しいと、何度も星に願った。
そんな僕に、転機が訪れた。
最初のコメントを投稿しよう!